特別企画 小説版 『クラリティの「不味くない英国料理」!』

クラリティの「不味くない英国料理」!
ラスグレイブ探偵譚より 著作『チームレッドへリング』

           
 皆さんこんにちわ。
 クラリティ・エヴァンズがお送りする「クラリティの不味くない英国料理!」のお時間です。
 助手はいつものこの方です。
「どうも。豆料理大好きのカナダ人、アルフレッド・ニューマンです」
 あのー、アルフレッドさん、今日はカナダの豆料理の紹介じゃないんですが…。
「はいっ、本日のお題はこちら。イギリスのティータイムには欠かせない『スコーン』です!」
 …という訳で本日はスコーンを作って行きたいと思います。
 早速先生をお呼びしましょう。レッドへリング料理教室講師のアイリーン・スロウ先生です。
「やー、どうもどうも。……ってリッテ、何そのいい加減な料理教室の名前」
 いえ、あの、雰囲気出るかなぁって。
「アイリーンは先生なんて柄じゃない気がするなぁ、僕は」
 ゴツッ!
「まあ、とにかくスコーンを作るんでしょ。ほらそこの助手、さっさと準備する!」
「……はーい」
 材料一人前の分量は以下のとおりです。

 薄力粉 225g
 バター 40g
 ベーキング・パウダー 小さじ2~4杯
 卵 1個
 牛乳 70~140cc(量はお好みで)

 では早速料理の方にとりかかりましょう。

 1:大きめのボウルに薄力粉とベーキング・パウダーを合わせてふるい入れる。
 先生、これは?
「見たとおりです。はい助手君、さっさとふるいにかけて」
「えーと、こうすればいいのかな…ドザーッと」
 ガツッ!
「馬鹿、粉が零れたじゃない!もっと丁寧にやんのよ!」
「痛いなぁ…最初に言ってよ」
「そんぐらい言わなくても解るでしょ。じょーしきじゃない」
 えー先生、ここでワンポイントアドバイスなんですが…。
「え、あー、そうね。ベイキングパウダーは小さじ2~4杯で加減すること。これ以上入れると苦くなっちゃうわ」
 という事です。

 2:バターをボウルに入れ粉に混ぜ込み、ぽろぽろの粉状態にする。
「またまたここで先生の有り難いアドバイス!バターは指先をこすり合わせるようにしっかり粉に混ぜ込む事! ここ大事!」
「でもアイリーン、これめんどくさいよ」
「料理は手間暇がかかるのよ!」
「じゃなくて、バターが塊で入ってて大きすぎるんだけど…」
「んなもん気合で混ぜるのよ、気合で」
 気合の無い方…もとい皆さんの場合は予めバターを細かく刻んでおくと作業しやすいですよ。
 現代的な機器を使うならフードプロセッサーを使ってもいいみたいです。
「何そのフードナンタラって」
 知りません。カンニングペーパーにそう書いてあったんで…。

 3:上記の粉に、溶き卵と牛乳を良く混ぜたものを加え、混ぜる。
 えーと、こちらに予め用意しておいた溶き卵と牛乳を混ぜたものがあります。
「んじゃ、それを早速粉と混ぜ合わせるわよ」
 では、これを粉の入ったボウルに注ぎます。
「では助手君、さっさと混ぜる」
「よーし、いくぞー!がしがしがしがし…」
 バコッ!
「アホタレ、激しくかき回すな!ここはさっくりと、切るように混ぜるの!」
「だから、なんで大事な事を最初に言わないんだよ」
「面白いからに決まってるじゃん」
 ……。
 あのー、先生。ワンポイントアドバイスを。
「あ、ああ。そうそう、この混ぜ込む作業は手早くね!時間をかけると粘りが出てあとでふっくらと膨らみにくくなるわ」
粘りをもたらすのは、小麦粉のグルテンという成分みたいですね。

 4:生地を手早くまとめ、打ち粉をした台の上で伸ばし、その後、形抜きで生地を抜く。
「助手君、できたの?」
「こんな感じかな」
「おー、カナダ人にしては上出来じゃない」

 そこ、国籍関係あるんでしょうか…。
 で、生地を台に載せて麺棒で伸ばします。
「アイリーン、どの位伸ばせばいいの?」
「常識の範囲内で」
「……良く解らないなぁ」
「ちょ、伸ばしすぎ! ピザでも作るの? もしかしてピザでも食ってろとか言うつもり?」

「誰もそんなこと言って無いだろ」
 ……えー、はい、次は生地の形抜きです。
「ま、主に既存の丸い形抜きでいいと思うけど、別にどんな形でもいいわよ」
 で、形を抜いて余った生地でこんなの作ってみました。
「お、ハート形ね。なかなか乙女ちっくじゃない」

 えへへ。
「でも、生地が膨れたら多分形なんて良く解らなくなると思うけどねー」
 ……気は心、です。
「僕もハートにしてみました」
「気持ち悪いわねー、誰が食べるのよ」
「君」
「ムキー!」
 せ、先生落ち着いて!

 5:220度に温めておいたオーブンで15分ほど焼く。
「あとは形抜きした生地を天板に乗っけて、オーブンで焼くだけよ」
 じゃ、天板に並べてっと。
「あ、そうそう。生地の上に卵黄とか牛乳を塗っておくと照りが出て美味しそうに見えるわ。味は変わらないけどね!」
「ふーん。で、アイリーン。オーブンってどうやって使うの?」
「おい助手。オーブンの使い方も知らないのか」
「うん」
「じゃ、オーブンを予熱もしてないわけだ」
「なにそれ」
「なにそれじゃないだろー! このバカナダ人!」
 せ、先生! オーブンの用意は私がしておきましたから!
「もー、リッテが賢くて良かったわ。オーブン内が十分予熱されてないと、時間通り焼いても生地が生焼けになっちゃうのよ」
 で、大体15分くらい、生地がキツネ色になるまで焼きます。さて、焼けるまで15分ほど暇になりますが……。
「ぼーっとしててもいいけど、皆のお茶の用意とかしていれば丁度いい時間じゃないかなぁ」
 そうですね。人数分のティーセットの用意でもしましょう。

 6:出来上がり…そしてティータイム。
 さて、出来上がりは…どうでしょう。
「おー。よく出来てるじゃない」
「美味しそうですね!」
 ではさっそく試食……じゃなくてティータイムにしましょう。

 さて、お味の方は…。
「いや待て待て我が妹よ。スコーンといったらアレを忘れていないかい」
 あれ、ですか。
「カリッとサクッと……ですか?」
「美味しいスコ……バカー! それスコーン違い!」
「じゃなくて、スコーンといったらそれに付けるものでしょうが!」
 はいはい。これですね。
 スコーンと言えばクロテッドクリーム、そしてジャムです。
 アルフレッドさんとアイリーン姉さんはホイップクリームが好きみたいですけど。
「あのー、よく僕も頂きますけど、クロテッドクリームって何ですか?」
「何って…クロテッドクリームはクロテッドクリームじゃない……リッテ、解説ヨロシク」
 ……あー、はい。
 クロテッドクリームとは、脂肪分の高い牛乳を弱火で煮詰めたものをひと晩おいて、表面に固まる脂肪分を集めて作られるものです。イギリス南西部、デヴォン州でなんと2000年以上前から作られている伝統的なクリームなんです。
 イギリス以外ではあまり一般的でないかもしれませんね。
 ちなみに、紅茶とスコーン、クロテッドクリームとジャムの4点セットは「クリームティ」とか「デヴォンシャーティ」とも呼ばれてますね。
「ふーん、結局は脂肪分なんですか」
「……人の腹見ていうな」
 あ、脂肪分は実はバターより低いんですよ。ホイップクリームよりは高いですけど。
「おー、んじゃーホイップが一番脂肪分が低いわけね。へー」
 でも、食べ過ぎれば結局…ですよ。
「……」

『いただきまーす!』
 今日の仕上がりは上々です。クロテッドクリームをたっぷり塗って、ジャムをかけると美味しいですねー。
「あたしはクリーム一押しね」
 他にも、生地にカットした果物やチョコなんかを練りこむと言う方法もあります。

 ジャムの代わりに甘く煮た果物やシロップ付けと一緒に食べるのも美味しいですね。
 この辺は季節によって取れる果物で試しても面白いかと思います。
「じゃ、今日はこれ以外にも僕からの差し入れ」
 アルフレッドさん、何ですかこの缶は。
「ニューマン商会謹製、カナディアンメープルリーフ印のメープルシロップ缶です!」
「おー、珍しく気が利くねー」
「早速どうぞ」
 ……へえ、甘さがしつこくないんですね。これはこれで、美味しいかも。
「本当はパンケーキとかにかけるんですが…こういうのも美味しいでしょ」
「もー、アルったら」
 ガスッ!
「何で殴るんですか!」
「愛情表現よ、愛情表現」
「じゃ、許します」
 あのー……愛情表現は殴る以外でお願いします。
「……騒がしいと思ったら、みんな揃ってたのか」
 あ、ラスグレイブさん。
「あ、イーサンさんじゃないですか」
「なんだ、探偵さん。いたの?」
「今帰ってきたところだけど、匂いに釣られてね」
 あ、じゃあ今お茶の用意しますね。

「……あ、ところでクラリティさん」
 何でしょう、アルフレッドさん。
「スコーンって、料理ってよりはお菓子、な気がしますが…」
 い、いいんですそんな細かいことっ! ……つ、次こそは不味くない「料理」を紹介しますからっ!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

eighteen − 5 =